6年 速さ
「速さ」の問題は、「速さと時間と距離の関係を表す公式」を覚えていれば、たいてい解ける問題です。
ただ、公式を覚えていて解けても、距離とは何か、時間とは何か、速さとは何かということを、きちんとつかまないまま、何となく公式で解いていると応用がききにくいので、この分野の概念をさまざまな体験を通して身につけることが大事です。
速さと時間と距離の関係は、「みはじ」とか、「はじき」と呼ばれる関係図でシンプルに表せます。
(呼び方が異なるのは、道のりと呼ぶか、距離と呼ぶかの違いによります。)
<み>道のり=速さ×時間 <は>速さ=道のり÷時間 <じ>時間=道のり÷速さ
記憶があいまいになったら、㎞/ 時といった速さの単位を思い出して、
「速さは㎞のもの(道のり)を時(時間)で割っているからこういう書き方になっているんだな」
と考えると、他の2つの公式は、それを変形させて求めることができます。
理解を助けるための遊びリスト
速さのバトルカード
速さに親しむバトルカードの作り方を紹介します。
画用紙を丸い形に切り取って、カードを作ります。
乗り物の速さ、動物の速さ、惑星の速さ、台風の速さなどを、図鑑やネットで調べて、表にイラストとタイトル、裏に速さを書き込みます。
50メートル走のタイムを裏に書いて、自分やおともだちの速さのカードも作ります。
下の写真のように表にイラストを描きます。裏には、速さ(時速や分速、秒速)を書きます。
下の写真では、左が表面、右が裏面です。
バトルカードの遊び方
速さを比べて戦います。
速さの単位をそろえて、どちらが速いか競います。
たとえば、時速45186.2㎞の木星と秒速69.8mの台風23号が
戦う場合、
秒速を時速に変える計算をします。
69.8×3600÷1000
の計算をすると、台風を木星と同じ時速/㎞の単位にそろえることができます。
5年小数のかけ算わり算でも紹介しています
4年小数でも紹介しています
<秒速を時速に変えることができるようになるまでのステップ>
ステップ1
秒速をもとにして、
「1秒にどれくらいの距離を進めるのか」をイメージします。
床にボールを転がして、1秒にどれくらい進んだのか目で確かめると
イメージしやすいです。
ステップ2
「1分ならどれくらい進めるのか」話しあいます。
×60
1分に進む距離を求めることができたら、
「1時間ならどれだけ進めるのか」話しあいます。
さらに ×60
ステップ3
×60×60 (×3600のこと)が求まったら、
「mを㎞になおす方法」について話しあいます。
÷1000
<時速を秒速に変えることができるようになるまでのステップ>
ステップ1
「1時間にこーんなにたくさんの距離を進めるとするね。
1分間に進む距離はもっと少ないね」という話をした後で、
時速をもとにして、「1分にどれくらいの距離を進めるのか」をイメージします。
床にボールを転がして、1秒にどれくらい進んだのか目で確かめると
イメージしやすいです。
÷60
ステップ2
「1秒ならどれくらい進めるのか」話しあいます。
さらに ÷60
ステップ3
÷60 ÷60 (÷3600のこと)が求まったら、
㎞をmになおす方法を話しあいます。
×1000
ゲームを楽しいものにするのと、計算式の作り方をマスターするため、
通常は電卓を使って戦いますが、
「電卓を使わないで、計算して答えを出して、それが電卓の答えと合致した場合、
新しくほしいカードを5枚ゲットできる」といったルールを加えて、
計算力も養うのもいいです。
<バトルカードを使った「何分かかる? 何時間かかる?」遊び>
距離を表すカードを作って、選んだ時速カード(分速カード)だと、時間がどれだけかかるか計算してみましょう。
<距離のカードの作り方>
表に有名な山の標高やタワーのイラスト、裏に高さや長さを書いたカードを作ります。
子どもと出かけた場所や子どもが関心を持ったものなどを中心に作ると面白さが増します。
速さのカードを使って、「木星は富士山(標高)にどれくらいの時間で登るのか?
といったことを計算して調べて遊びます。
ふせんを使って、旅人算を考える
「速さ」の図をかくことは、すごく難しいことのように感じがちです。
そんなとき、自分で矢印をかく代わりに、矢印の形のふせんを貼りながら問題を解いてみます。
すると、それまで線分をかいて考えるのがすごく苦手だった子が急に
書いて考えるようになることがあります。
そこまで急激な変化がない場合も、速さの問題への苦手感は減るようです。
レベルアップ
「ふせんの矢印」で問題を解いたら、
次は、「矢印」をかいて、考えてみます。
速さと時間から、進んだ距離を求める場合
上の写真は、「1秒につき、3mずつ進みます。9秒後にどれだけの距離を進でしょう?」
という問題で書いている矢印です。赤い矢印1本分が、1秒間に進む距離です。
矢印の端から端までが、9秒間に進んだ距離になります。
2つの離れた場所から、相手の方に向かう場合
2つの離れた地点に点を打ちます。
そこから、それぞれ、1秒ごとに進む分の矢印を書いていきます。
A(黒)は1秒間に□m、B(赤)は1秒間に□m進む。
矢印を書くことに慣れたら、A地点を出発して1秒間に3メートルずつ進みます。
B地点を出発して2メートルずつ進みます。
3秒後に、どの地点にいるのか書いてみます。
同じ場所から同じ方向に出発する場合
赤い矢印は、進んだ距離のちがいです。
いろいろな問題を矢印で書いてみる練習をしてから、
速さの文章題にチャレンジすると、複雑な問題も扱いやすくなります。
パズル問題としてじっくり時速の問題を考える場合
カラーの工作用紙を使って、旅人算や時速の問題を解くと、
さまざまな時速の問題にパズルとして楽しみながら取り組むことができます。
工作用紙で作った矢印で問題を考えた後は、自分で矢印をかいて
計算で解く練習もします。
いきなり線分を描きながら解くのは難しいのですが、矢印の紙を置きながらパズルのように問題を解くのは楽しい作業です。
1時間に□㎞を1秒間に□mになおします
(例 3㎞/時間を□m/秒に)
速さの単位の変換を苦手とする子は多いです。
なかなか理解できない子には、時間の長さを体感する次のような遊びをしてから学ぶと、理解しやすくなります。
時計を見ながら、1分間いすに座って手をあげて、じーっとします。
この後で、「1時間だと、この1分間いすに座って、手をあげてじーっとするのを60回することになるよ」と教えます。
次に「1秒だけ、いすに座って手をあげる」のもしてみます。
「1時間にこれだけ(手で大きく広げて、大きな幅を表現しながら)歩く」という人は、
「1分間だと、これだけ(手で小さな幅を表現しながら)を60で割った分だけ歩くことになるね」
「1秒だと、さらに60で割った分だけ、ほんのちょっとだけ歩くことになるね」と
指二本で歩く真似をして、1時間分の距離、1分の分の距離、1秒分の距離を手で表してみます。
グラフを見ながら、「たてだけ、横だけ」を体感する遊び
速さや時間や距離のグラフを見ながら解く問題が苦手な子は、
こんなエクササイズをすると、理解が進みます。
紙に距離を表す線を書きます。だいたいのめもりもかいておきます。
えんぴつを兄、けしごむを弟とします。
1分たったよ。兄はどこにいるの?弟はどこにいるの?
2分たったよ。兄はどこにいるの?弟はどこにいるの?
こんな風にまっすぐの線でかいた距離のどこまで進んだのかを観察するのは、
日常の感覚に基づいたわかりやすいものです。それがグラフになると、すごく難しいもののように
見えていただけなんだと気づきやすいです。
クイズ
時計の長い針は1分間に何度進む?
時計盤を見ながら、時計の長い針が1分間に何度進のか、針を動かしながらクイズとして取り組んでみましょう。
長い針ができたら、短い針にも挑戦します。
時計の長い針は、1時間に360°進みます。たいていの子が知っている事実ですが、「それなら1分間にどれだけ進むのか」と問われると、ほとんどの子が困ってしまいます。困っていたら、いきなり解き方を教えずに、「30分ならどれだけ進むかな?」とヒントを与えてみます。30分がわかったなら、10分ではどれだけ進むでしょう?
こうして考えていくと、360°を60で割ると、 1分間に6°進みます
進んできることがわかります。
短い針は30°÷60=0.5° 1分間に0.5°進みます
速さ 問題例
<教科書レベルの問題例 1>
(1)時速32㎞で進む船が、160㎞進むのにかかる時間を求めなさい。
<教科書レベルの問題例 2>
(2)Aの機械は1時間で200個、Bの機械は30分で300個の
部品を作ることができます。部品を作る速さは、どちらの機械が速いですか。
<応用問題例>
ゆうじさんはA町からB町まで分速70メートルの速さで歩きます。けいこさんは
B町からA町まで分速80mで歩きます。ゆうじさんとけいこさんが
同時に歩き始めたところ、ふたりはとちゅうで出会い、その後、30分後に
ゆうじさんはB町に着きました。
ふたりは出発してから何分何秒後に出会いますか。
こんなところでよくつまずいています
二段階の単位の変換ができない
二段階の単位の変換ができない子は多いです。計算を解くことに気持ちを奪われていると、どういう手順で解くのか、大きい枠組みがつかみにくいです。先に電卓などを使って、複雑な単位の計算をするゲームをしておくと、二段階の単位の変換のプロセスが定着していきます。
解決法
㎞毎分=□m毎秒
(時速のバトルカードで遊ぶ)
理解を助けるための遊びリストで紹介した「乗り物や惑星のイラストを表に描き、裏に時速を書いたカード」を作って、どちらが速いか競うバトルをします。
電卓を使って、単位をそろえて戦ううちに、単位の変換をしっかりマスターすることができます。
<応用問題> トンネルと鉄橋の問題がわからない
列車がトンネルをくぐったり、鉄橋を渡ったりする問題は、速さの単元でよく出る問題です。
この問題は、「トンネルをくぐりおえた」ところまでなのか、
「トンネルから列車の先端が見えた」ところまでか、といった違いで、計算の仕方が変わってきます。
これまで公式を暗記するだけで学んできた子には難しいです。
問い方のパターンを正確に理解するには、列車とトンネル(折り紙等で作ったもので十分)を用意して、それぞれのパターンごとに、自分で列車を動かして学ぶのが一番です。
解決法
小学生の子たちが乗り物で遊んでいるとき、クイズのようにトンネルや鉄橋の問題を出しています。
1、2年生の子も楽しく取り組んでいます。
トンネルを作って、くぐらせる乗り物の先端部分にシールやふせんなどを貼っておきます。
写真では、ブロックの電車を使っていますが、えんぴつやものさしを電車に見立てて、
折り紙のトンネルをくぐらせるのでもOKです。
先端部分がどれだけ動いたのか、シールの動いた幅を調べて考えます。
トンネルを通過すると、列車はどれだけ進む?
ブロックを使ってトンネルと鉄橋の算数クイズを出すと、低学年の子たちも、
さまざまなケースごとに、「列車がどれだけ進んだのか」考えるのを面白がります。
準備
列車の長さを決めます。ここでは、10mとしています。
トンネルの長さも決めます。ここでは、200mとしています。
パターン別の進んだ距離
<列車が立っている人の前を通過する場合、進む距離>
赤いテープで進んだ長さを示しています。お家では、えんぴつなどで書くので十分です。
列車の長さ
のことです。
進んだ距離は上の写真の赤いテープの長さです。
<列車の先頭部分がトンネルに入ったところから、
トンネルから列車の先頭部分が出るのが見えるまでに列車が進む距離>
トンネルの長さ
のことです。
<列車の先頭部分がトンネルに入ったところから、
トンネルから列車が完全に出てくるまでに列車が進む距離>
トンネルの長さ+列車の長さ
です。
<列車がトンネルに入って完全に見えなくなってから、
トンネルから列車が完全に出てくるまでに列車が進む距離>
トンネルの長さ
のことです。
ブロックでも紹介しています
忘れ物をした人を自転車で追いかける
「忘れ物をした人を自転車で追いかける」「先に出かけた人をかけ足で追いかける」といった経験は
自分でしたことはなくても、漫画やドラマで目にすることがあるはずです。
人形(紙に棒人間を描いただけのものもOK)で、そんなシーンを再現してみます。
その際、「時間にだけ注目する」「距離にだけ注目する」「速さにだけ注目する」という3つのパターンで
再現すると、グラフで時速の問題を扱ったものがイメージしやすくなります。
「時間にだけ注目する」なら、「〇時〇分です」「10分後の〇時〇分」と言いながら、先に行った人
と追いかける人の位置を確認します。
幼児も遊べる この単元への気づきを促す遊び
ビー玉コースターなどの転がす遊び と タイムウォッチ
時間を計ると面白いものってたくさんありますね。長いビー玉コースターを作って
スタート地点から転がり終えるまでに何秒かかったのか計ってみます。
転がるコースターの長さがわかれば、速度の計算ができますね。
身近なものが転がる速度を求めて、動物の走る速さと比べると速度への興味がわきます。
日常のなかでこの単元の学びを体感するには?
「速さ」を実感する体験のいろいろ
● 好きな乗り物の時速について話題にする
好きな乗り物の速さを書いたポスターを作ったり、乗り物の写真を切り貼りしたカードの
裏に速度を書いたりすると、速さへの興味が高まります。
● 動物の走る速さについて調べる
車でおでかけ
車でのお出かけは時速を意識するきっかけ作りになります。
地図で行先までの距離を調べ、車で出発した時間と、到着した時間をチェックします。
パーキングなどで休憩した時間もチェックしておきます。
運動会
運動会は速さを意識するきっかけになります。
50メートル走の速さをはかったら、1秒にどれだけ走れるのか
時速を計算してみます。
カードにしておくと、時速のバトルゲームにエントリーできます。
5年小数のかけ算わり算でも紹介しています
4年小数でも紹介しています
<文章題で使われることば>
● 通過する
● 先頭が鉄橋にさしかかる
● 最後尾がわたりおえる
速さ 問題例 の答え
<教科書レベルの問題例>
(1)160÷32=5 答え 5時間
<教科書レベルの問題例 2>
(2)Bの機械
< 応用問題例>
70×30=2100m 2100÷80=26.25 26分15秒